ただ愛されたいだけなのに
スマホの電源を切ろうとした瞬間、電話が鳴った。正紀からだ。わたしは一コールで出た。
「もしもし……」
「あ、ごめんね? えっと何の話してたっけ」
「さあ? ……どうでもいい話してた」
「そうか……あ、いつ会うかだったね」
正紀が自分で自分の首を絞める話題を出すなんて。
わたしはおどろいて、返事をするのを忘れていた。
「俺は、まぁ……いつでもいいけど」と正紀は話続けている。
「でもさすがに今月とか来月は無理だけどな」
「ほんとに言ってるの? もしもウソだったら——」
「ウソはもうつかないよ。学校がある日は無理だけどさ」
今日の正紀は別人みたいだ。声に優しさがあふれている。
わたしは頭の中にカレンダーを想像した。今は旅費がない。これから入る予定もない。となると、三ヶ月ほどバイトをする必要がある。
「ゴールデンウィーク」
わたしは言った。正紀の様子を探るように、注意深く。
「旅費を稼がなきゃだから」
「いいよ。俺もゴールデンウィークがくるまでバイトかなにかしようかな」
わたしは喜びと、疑り深い性格がごちゃ混ぜになって、なんと言えばいいかわからなかった。どういう心境の変化なの? 罠じゃないことを祈るしかない。