ただ愛されたいだけなのに


    —ほんのすこし粘ってみる—


 藁にもすがる思いを、はたち目前の十九歳にして味わった。

 それは街の表通りをほっつき歩きながら、ハローワークに行こうか迷っているところから始まった。
 わたしは迷いに迷ったあげく、正紀の気が変わらないうちにバイトを見つけようとハローワークに来た。
 一人暮らしをしたいという設定で窓口の担当者と話をした。

「ずーっと短期で辞めてきているでしょう?」
 眼鏡の太った女が、はるか高台から見下ろしているような視線を送ってくる。
「自分に合わないから辞める——じゃなくて、斎藤さんは合うかどうかの前に辞めてきてるよね」
 嫌な言い方に耳を傾けながら、早く探してくれないかと頭で思った。
「仕事って、簡単なものじゃないの。厳しいものなのよ。もうあわないから辞める、じゃダメなの」
「はあ……」
「短時間希望や短期間希望は会社側もやる気がないって見なすうえに、自立は無理よね」
 太った女神の勝ちだ。


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