この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】

修道院行きをプレゼント(他)

 空はよく晴れた快晴。太陽はほぼ天頂に登っている。
 予定通りにその一行は王城に訪れた。


「やあ、久しぶりだね。ローデリヒ殿。歓迎ありがとう。急に悪かったね。ティーナが貴国の海が見たいと言い出して」

「……ああ、久しぶりだな。ルーカス殿、我が王国へようこそ。海の方は人気の観光地だ。昼間は勿論、夕日も綺麗だから是非見ていってくれ」

「そうさせてもらうよ」


 同い年の王太子同士。国際的な会議でも以前に何度か顔を合わせた事がある。隣国という事もあって、ルーカス・コスティ・アルヴォネンの情報はそれなりに入ってくる。

 項で一つに結んでいる黒髪は、肩につく位の長さ。ややたれ目気味の紫眼は、優しそうな印象を受ける。
 見た目通り、誰にでも分け隔てなく優しく、浮いた話は一つもない王太子。……らしい。

 ただ優しいだけではないだろう、とローデリヒは常々思っている。
 優しいだけで一国の王太子が務まるとは思っていない。

 ――それに、アリサの元婚約者だった男だ。

 あんまりアリサに会わせたくないし、ローデリヒ自身も関わりたくないといった私情もある。
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