この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 他人の子供に入れ込むなんて自分でびっくりだわ……、とか思ってたけど、自分の子供だったって事か。

 あれ……?私、ローデリヒさんに負けず劣らずの親バカって事?

 めちゃくちゃ自分の子供の事、可愛い可愛い言ってたんだけど……。
 それに日記も知らないうちに育児日記レベルでアーベルくんの事しか書いてなかった。

 無意識のうちに母性本能が出てたって事なの……?

 まだまだぺったんこのお腹に手を当ててみる。本当にこの中に子供が一人いるって不思議な感覚だなあ。
 どうやらこちらは、まだ母性は芽生えてないみたいだ。

 私の様子を見ていたローデリヒさんが、そわっと触りたそうにしていたので、彼の手を取って私のお腹に当てた。


「……魔力を感じる。まだ小さくて、可愛いな」


 口元に小さな笑みを浮かべながら、オカルトっぽい事を呟かれた。魔法については全然分からないけど、もう既に親バカになりそうな気しかしない。

 そのままお腹に向かって話し掛けそうな勢いの彼を見下ろして、私は自然と顔をほころばせた。

 なんだかこの人、意外と可愛いな。
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