この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ルーカスは最年長という事もあって、女児二人を見守るお兄さんのような立ち位置だった。
 良い事をしたら大袈裟なまでに褒めてくれて、悪い事をしたら優しく窘めてくれる、そんな穏やかな気性の持ち主。彼が怒ってる所なんて、ティーナは今まで見た事がない。

 アリサは活発な少女だった。公爵家の令嬢らしくない振る舞いをよくしていたが、引っ込み思案で人見知りのティーナの手を引っ張ってくれた。
 いつだって、楽しい遊びに連れて行ってくれるのは彼女だった。王城の廊下をアリサと全力で走って、大人達に怒られたのはティーナの中で良い思い出である。


 その日もいつも通りの日常だった。
 病弱だが優しい母が作ってくれた、ティーナそっくりの人形を胸に抱いて、アルヴォネン王城を低いヒールを鳴らしながら歩いていた。

 ――八歳。まだ魔法は使えない、子供だった。

 大体十歳辺り。早い子は十歳にならないかくらいで魔法が扱えるようになる。それまで魔法が使えないのは、身体と精神の成長の方に魔力を著しく消費しているからであった。

 最年長のルーカスは既に自分の魔法の適性が徐々に分かり始めてくる頃で、アリサとティーナに請われて氷の結晶を作ってくれていた。
 それを見たアリサは次は自分だと、鼻息荒く勢い込んでいたのを覚えている。
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