この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 複雑だ。複雑だけれど、なんとなく理解した気がする。

 結界がなくなった瞬間、伝わってきた感情。その多くが負の感情だった。
 普段から怒りっぽい人はともかく、殺意まで感じることはあまりないはず。


「だが、貴女のその能力は非常に便利だ。特に私達のような為政者にとっては。いつも内心何を考えているか分からない貴族ばかりを相手するからな」


 肩を竦めてみせたローデリヒさんだったが、次には眉間に皺を寄せた。


「その力を利用したんだ。アルヴォネン国王は。一時の強い殺意だけでも、自分に対しての叛意を推し量れる指標になる」

「アルヴォネン……」


 日記の中で出てきた名前だ。アリサの出身地かな?と推察を立ててた所。


「悪い者達に利用されないよう、貴女の力は秘匿された。貴女自身も悪用しないよう、魔法の使い方も教えていなかったと聞いている。アルヴォネン国王は〝王国の為に正しい使い方〟をしたと貴女は評している」

「……それって、ルーカスって人と関わっているんですか?」


 確か婚約破棄をしていたと日記の中では書いてあった。たぶんアルヴォネン王国の人。噂っていうのも気になってる。

 だから何か関わりがあるのかなあ、と軽い気持ちで聞いたのに、場の雰囲気ば一気に重々しくなった。
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