この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 最初私の能力が怖い、なんて思った。随分と危ない事をやらされていたけれど、非常に便利な能力なんじゃない?
 ……だから、国王様に利用されたんだと思うんだけど、この訳の分からない状況では使いやすい。


「嘘発見器?」


 ローデリヒさんが私の言葉を復唱する。
 私は結界のペンダントを握った。ひんやりとした鉱物の感触が、手のひらに伝わってくる。

 所詮、〝他人事〟だ。そう思うと同時に、自分の事のように感じてしまう。
 この酷く矛盾した感情は、この身体の意識に引きずられているからなんじゃないかって。

 けれど、そうも言ってられない。


「私、歓迎パーティーに出たいです。アルヴォネンの王太子夫妻と会ってみたい」


 このややこしい事態を明確化する為には、どうしたって会うことは避けられないはずだから。


「ローデリヒさんの気持ちも分かります。ルーカスって人は、少なくとも過去の私と関わっています。だから離縁するかどうかも、記憶を取り戻さないかどうかも、その人達に会ってから決めたい」
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