この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 並べられるドレス全てが結婚式のお色直しに着るようなカラフルで、レースがたっぷり使われた物だった。
 正直レンタル物かと思ったけど、全て私のものらしい。ざっくり数えただけで50着以上あります……。
 そして、全部新品なんだって。

 素人目で見ても分かる。ドレスに使われているレースがかなりお高いものだと。
 そして、ドレスによってはレースにスワロフスキーみたいな、キラキラと輝く小さなビーズが縫い付けられている。

 あれ、本物の宝石だったりしないよね……?


「奥様。奥様は妊婦でいらっしゃいますので、ゆったりと着られるエンパイアラインのドレスを中心に選びました」


 並べられた豪華なドレスに、完全にフリーズしてしまっていた私。ゼルマさんは私の顔を覗き込みながら、ニコニコと説明してくれた。
 説明してくれたのはいいけれど。


「……エ、エンパイアラインってなんですか?」


 基本的にドレスを見る機会が無い庶民にとっては、呪文にしか聞こえない。


「エンパイアラインは胸下から切り替えがあるので、他のデザインと違ってウエスト周りはゆったりと着れるものとなっています。ベルラインと比べると……全然違いますでしょう?」


 比較として出してくれたベルラインを見てみると、ウエストをめちゃくちゃ細く絞っている。そして裾に掛けてふんわりとレースが広がっていた。物語に出てくるお姫様みたいなドレス。
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