この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】

真に悪いのは。(他)

「昨日と警備体制が違うわ」

 キルシュライト王国王城の一室で、少女は蜂蜜のような声で呟いた。確信を持ったその言葉は、彼女がいかにこの王城へと目を向けているかを表している。

 薄ピンク色のレースを沢山重ねたベルラインドレスを身に纏ったその姿は、大輪のカーネーションのようだった。

「それだけじゃない。紛れ込んでいる〝鼠〟も今日は落ち着かないみたいだね」

「あら、昨日も鼠はいたわ。きっとわたくし達と一緒にアルヴォネンから来たのよ。気持ち悪いわ」


 無垢な少女のような声で、毒を吐く。
 少女――ティーナは形の良い唇を噛み締めた。

 昨夜、アリサはパーティーに現れなかった。代わりに現れたのは、呼んでいない〝客〟。ルーカスとアリサの命を狙う暗殺者だけだった。

 勿論、アリサを誘ったその日のうちに彼女がパーティーに出てくるとはあまり思っていない。
< 184 / 654 >

この作品をシェア

pagetop