この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 元々アリサがパーティーに出る予定がなければ、アリサのドレスも用意しなければいけないし、パーティー会場警備体制変更もしなければならないだろう。

 王太子妃ならばその位の無茶は通せるが、とティーナは一人の男の顔を浮かべる。このキルシュライト王国の王太子。

 あの忌々しい男ならば、手抜きは絶対に許さないだろう――と。

 自然と扇を持つ華奢な指に力がこもる。


「ルーカス、貴方はどう思って?」


 ティーナに問われたルーカスは、ゆっくりとアメジスト色の瞳を瞬かせた。玩具を与えられた少年のように、抑えきれない興奮の色を宿しながら。


「そうだね。きっと、今夜辺りにアリサが出てくるかもしれない」


 自然とルーカスの口元が緩む。ティーナも同じだった。


「とっても、楽しみだわ」


 うっとりと蕩けたような表情を浮かべるティーナを見て、ふと真顔になったルーカスは口元に手を当てて呟く。


「アリサを連れ出す手筈を再確認しておこう。城の警備体制変更点と〝横槍〟には充分気を付けなければいけない。敵は〝あの男だけじゃない〟からね」

「ええ」
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