この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ティーナも顔を引き締めて小さく頷く。そして扇を持っていない手で、指折り数え始めた。


「13人。13人の名前は全て覚えているわ。そして、その中でアリサに直接的に危害を加えてきた者は、この2年でほとんどわたくし達が排除してきたわ。あとは1人だけ」


 時間が掛かってしまった。
 だけれど、やっと本望を果たすことが出来る。目前にして失敗する訳にはいかない。


「ミスカ・サロライネン。反逆罪で処刑された元侯爵トピアス・サロライネンの嫡男にして、――一番最初にアリサの能力が使われた例」


 どうしても捕えられなかった。元侯爵家故に、色々なコネクションがあったのだろう。未だに本人の姿を捕えられず、見つけられるのは末端のみ。

 組織ぐるみで動いていることは確かなのだ。
 しかし、詰めまでしっかりとこなさなければ、全てが水の泡。2年という時間を費やしてしまったが、これ以上引き伸ばし続ける訳にはいかない。

 アリサの精神的な面を考えると、きっと遅すぎるくらいなのだ。

 二人は信じ込んでいた。
 アリサが自分達との再会を喜ばない筈がないという事を。

 二人は夢にも思っていなかった。
 アリサがルーカスとティーナと過ごした日々を、全く覚えていない事を。
< 186 / 654 >

この作品をシェア

pagetop