この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】

仮面夫婦のこれから?

 若干心配になりながらも、ムギューっとアーベルを抱き締めていると、アーベルはキラキラとした瞳で私を見上げてきた。

 ふわふわの金髪に海色の瞳は、ローデリヒ様に本当によく似ている。以前に国王様がローデリヒ様の幼少期にそっくりだと言っていた。でも、ローデリヒ様の瞳が穏やかな海の色に対して、アーベルはキラキラと太陽を乱反射する海の色のように輝いている事が多い。

 フレスコ画に描かれている天使のようなほっぺたをつつくと、アーベルは上機嫌でニコニコと笑っていた。


「ほら、アーベル。父様の所にもおいで」


 ベッドの隣に座るローデリヒ様が手を広げると、アーベルはもぞもぞと私の腕から脱出して、彼の方へと手を伸ばす。ローデリヒ様もアーベルを抱き上げて、自分の膝の上に乗せた。

 なんだか、ローデリヒ様の膝に座るミニローデリヒ様みたいで可愛い。

 上機嫌なアーベルの頬を私と同じようにつつきながら、ローデリヒ様は口を開いた。
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