この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ローデリヒ様、特に公務の予定が入っていない私とは違って、昼間は王太子の仕事やってるし。私と同じく寝不足なはずなんだけど、睡眠時間よりもアーベルの方が心配らしい。ローデリヒ様も寝不足で倒れないか私は心配している。

 私は基本的に予定は何もないから、多少寝不足でもお昼に寝たりとかできるし……、ローデリヒ様と寝室別にした方がいいかなあ。

 グリグリと私の胸元に頭を擦り付けるように甘えてくるアーベルの背中を撫でながら、後で提案しようと決めた。

 椅子の上で丸まっていたローちゃんが、伺うようにこちらを見ている。猫も人の気持ちが分かるのか心配しているらしい。

 扉の外からローデリヒ様の声が聞こえる。少しだけ苛立ったような、そんな雰囲気の声音。

 ゼルマさん達と何かあったのかな?と思いながら、アーベルへと視線を戻して――、ギョッと目を見開いた。

 何やらアーベルの背後の空間がゆらゆらと歪んでいる。例えるなら、水面からお風呂の底を覗いたような感じ。

 疲れているのか、と目を瞬かせてみるけれど空間の揺らぎは相変わらずそ・こ・にある。なんだか怖くなって、一歩後ずさった。しかし、アーベルにまとわり着いてくるかのようにこちらへと広がる。その空間はどんどん波紋のように大きく揺れていき――、


「やああああ!!!!」

「ちょ……?!」
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