この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 自分達が世継ぎを産む、と口々に語り出す側室達に私は目が遠くなった。確かに子供が出来たら世継ぎにしたいだろうけど、子供出来る前からこんな事考えるなんて。どうやら本気でそう思っているらしい、という事だけが伝わってくる。

 後宮ってこんな事しかすることないのかな……?
 まだ子供も出来てないのに、ローデリヒ様を失脚させようとしてたの?私、来なくてよかったのでは?

 …………アーベルの事もあるし、帰りたいな。
 ちょっと後悔しつつある。

 それにしても、後宮にも勢力図とかいうやつはあるのか、上座に座っている人達は賑やかに話しているけど、私の周り……、下座に座っている人達は相槌を打つだけ。なんかよっぽど怖い目にあったのか、私の隣に座っている同世代位の赤髪の女の子なんて、真っ白な顔をしてガチガチに緊張している。

 この子だけじゃないんだけど、何ヶ所からお茶会が始まった時から不安や恐怖がビシバシ伝わってきてる。

 後宮、怖。

 そして、サラッとスルーしそうになったんだけど、よく考えたら息子と息子の嫁と同世代の女の子が後宮に入ってるって……。
 国王様、幾ら合法で大丈夫でも、流石にちょっと引くわあ……。

 ドン引きしながら顔だけはニコニコとしてたけど、隣に座っていた女の子が、何やらゴソゴソと膝上で何か手を動かしていた。

 なんだろう?って思って注視していると、赤髪の子は真っ白な手を彼女自身の紅茶のカップにかけた。その手から紅茶の中に何か(・・)が落ちるのを確認する。本当にちゃんとしてないと分からない程の鮮やかな手つきに、彼女が相当慣れている事が分かった。
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