この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
アーベルは口を閉ざしたまま、紙きれを本のページの間に戻す。キルシュライト王国詳細図、第三巻。表紙の金箔の押された文字が、煌めいた。
国王は頬杖をつきながら、アーベルの一挙手一投足に注目する。
「……意外と、時空属性の縛りも緩」
国王の言葉が不自然な所で止まる。アーベルへと手を伸ばし、文字通り光の速さで何かを掠めとった。
ジャラリ、と金属の擦れるような音が響く。沢山の鍵の束を見て、国王は考え込むように黙り込む。
離宮行きの予定を記した紙を取ってくる事が目的だった。
アーベルは過去に起こった離宮行きについて知っている。アリサの様子を見て、日程をズラした事も、この紙の通りに進まない事も。
正確には――、この紙を自分達以外の手に渡らないようにする為だった。
だが、アーベル一人の行動では、目的に対する解決策として無意味だったかもしれない。無駄だったかもしれない。
「鍵はちゃんと、閉めていたんです」
だから、この時代の人間に変えてもらうしかないのだ。未来を。
国王はようやく引っかかる事に思い当たり、唇を戦慄かせた。
「まさか、お主……それが真の目的じゃったのか……?!」
アーベルの口元が薄く弧を描く。目を細めて、彼は酷く満足気に微笑んだ。
国王は頬杖をつきながら、アーベルの一挙手一投足に注目する。
「……意外と、時空属性の縛りも緩」
国王の言葉が不自然な所で止まる。アーベルへと手を伸ばし、文字通り光の速さで何かを掠めとった。
ジャラリ、と金属の擦れるような音が響く。沢山の鍵の束を見て、国王は考え込むように黙り込む。
離宮行きの予定を記した紙を取ってくる事が目的だった。
アーベルは過去に起こった離宮行きについて知っている。アリサの様子を見て、日程をズラした事も、この紙の通りに進まない事も。
正確には――、この紙を自分達以外の手に渡らないようにする為だった。
だが、アーベル一人の行動では、目的に対する解決策として無意味だったかもしれない。無駄だったかもしれない。
「鍵はちゃんと、閉めていたんです」
だから、この時代の人間に変えてもらうしかないのだ。未来を。
国王はようやく引っかかる事に思い当たり、唇を戦慄かせた。
「まさか、お主……それが真の目的じゃったのか……?!」
アーベルの口元が薄く弧を描く。目を細めて、彼は酷く満足気に微笑んだ。