この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「深い意味等無かったとはいえ、男嫌いの貴女に問い掛けるには不適切だった」


 相変わらずローデリヒ様って言い方が堅苦しいと思いつつ、どうしたものかなと彼に近付く。そして、空いてた彼の片手を両手で握った。
 急なことに驚きで目を見張るローデリヒ様に、私は得意気に笑った。


「ほら、私だって進歩しているんですよ?ローデリヒ様の事だって触れちゃいます」


 私より一回りちょっと大きいその手のひらは、かなり硬い。日頃から鍛えている。そんな感じの手。

 瞬間的に殴り飛ばしていた頃と比べて、だいぶ進歩したと思う。いや、今でも瞬間的に殴り飛ばしてしまうかもしれない。ローデリヒ様以外なら。


「ローデリヒ様に慣れてきてる……って事なんだと思います。一緒にお風呂入る夫婦も居ますし、そんなローデリヒ様が自分を責めるような事でもないと思いますけど……」


 軽く手を握り返される。私の手の形を確かめるように、無言でにぎにぎとしていたローデリヒ様は愕然とした表情で呟いた。


「一緒にお風呂入る夫婦が居る……?!」
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