この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 タオル一枚腰に巻いたローデリヒ様と手を握っている非常にシュールな体勢。ローデリヒ様が真剣に考え込むように口元に手を当てた。そんなに深刻な顔するような事でもないと思うんだけど。


「……いや、難しいだろう。血圧と心拍数上がる。血管に負担をかけてしまう。健康に悪い。通常時でも控えた方が良いだろうし、妊婦は辞めた方が良い」

「何の話ですか?」


 いや、お風呂に入るだけで病気になるみたいな感じで話されても。


「中断してしまったが……、アーベルを風呂に入れてくる。風呂から上がった後は任せていいか?」

「分かりました」


 ローデリヒ様の手によってピカピカに磨かれたアーベルをタオルで拭く係を拝命した私は、動き回るアーベルをホールドしつつ、ササッと拭いて服を着せた。なんだかんだゼルマさんとかイーナさんにまるっきり任せきりにせず、頻繁に子育てに参加しているから一応慣れてはいる。

 この世界の王侯貴族は子育てなんて侍女さん達に任せきりだしね。私も親に育てられた感があんまりない。

 そう考えると私とローデリヒ様は、アーベルに構いまくっているという事だ。
 まさかこんな所で役に立つとは……、なんて思いつつ、ローデリヒ様もお風呂から上がったので、私もいただくことにした。

 王城のお風呂場よりも質素な感じだったけど、小市民である私には特に不便なく利用出来た。用意してあったバスローブを羽織り、長い髪の毛をタオルで拭きながら部屋に戻る。
同じくバスローブを着ているローデリヒ様が私の気配を感じて振り向く。ベットに腰掛けて、既に布団に潜り込んで眠っていたアーベルの頭を撫でていたらしい。
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