この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
日差しが部屋に差し込んでいる。まだそこまで眩しくない。早くもないが、どうやら寝過ごしはしなかったようだった。
ぐっすりと眠れたお陰か、自然と起きたので身体はスッキリしている。
「……ですが!」
ゆっくり起き上がろうとした所で、ローデリヒ様の抑えた、それでも険しい声が聞こえて一気に目が覚めた。反射的に声の方を向くと、ローデリヒ様と妖艶な美女。まだ二十代半ばから後半にしかみえない見た目だが、その実そこそこ歳をとっている女性。
「――ハイデマリー、さま?!」
派手な装飾品と真っ赤なドレスを身に付け、髪をきっちりと結わえたハイデマリー様がそこにいた。
「あら、起きたのね。身体の具合はどうかしら?」
起きてると思わなかったのか、ハイデマリー様は目が合うと黒目がちな瞳をパチクリと見開いた。私は慌てて居住まいを正す。
「は、はい。ゆっくり休めたので……」
「それは良かったわ。貴女だけの身体ではないもの」
「ありがとうございます……」
心配の言葉を掛けられて、びっくり半分、安心半分でベッドの上で頭を下げた。
隣でまだ眠っているアーベルを起こさないようにそっとベッドから降りる。ローデリヒ様がそっとガウンを肩に掛けてくれた。
手を引かるがまま小さくお礼を告げて、椅子に座る。