この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 クレーターの中心から、ルーカスはついと上を見上げる。半壊した屋敷内にいた人間が、何事かと集まってきていた。ルーカスはまっすぐ集まってきた人間へとまっすぐ目を向ける。視線を微かに動かして、がっかりした表情を隠すこともなかった。

「もしかして、ハズレてしまったのかな?それとも消し飛ばしてしまった?……ここに、反逆者達がいるって聞いていたのだけれど」

 一人呟きながら、抉れた地面を踏みしめる。
 一歩一歩、単身で近付いてくるルーカスに屋敷の中にいた人間は、その場で腰を抜かすか、這う這うの体でその場を逃げ出す。逃げ出したところで、この屋敷自体包囲されているので、不可能ではあるが。

「ば……っ、化け物、……っ!」

 立ち竦んだままの一人が吐き捨てるように、非難するように言った。ルーカスが一瞬だけ、動きを止める。

「へえ?随分な物言いだね」

 アメジスト色の瞳をすうっと細めた。口元に笑みを刷く。再び拳を軽く握って一歩、深く踏み込んだ。

「僕はこれでもれっきとした人間なのに」

 弾丸のように飛び上がった。
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