この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ルーカスが飛び降りてから、瞬き一つくらいの時間の後。遥か下の方から凄まじい破壊音が響いてくるのをティーナは聞いていた。

 そっと崖から下を見下ろすと、屋敷の真ん中に星屑が落ちたかのような大きなクレーターが出来ていた。クレーター中心にはルーカスが佇んでいる。遠目から見ても――、いや、見なくてもティーナ達は彼が無傷だと分かりきっていた。

 崖から飛び降りたくらいで(・・・・・・・・・・・・)、ルーカスが怪我をするなんて事はない。

 魔法で起こした風に乗ってくる声が化け物、と叫んでいた。

 ティーナは薄氷色の大きな瞳を細める。
 キルシュライト王国の王族は光の一族。アルヴォネン王国の王侯貴族だって、魔法の力を増幅させる為に血を濃くしてきた。

 その結果が、ルーカスとアリサなのだ。

「おじ様のした事を思うと、貴方達は被害者なのでしょうけれど」

 風が崖下から吹き上げてくる。ティーナの複雑に結い上げた銀髪を大きく揺らした。その風の香りが、僅かに血が孕んでいるのを彼女は感じ取っていた。

「わたくし達も、お友達が大切なの」
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