この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 このまま抱っこしてもらうべきか……、いや、そもそもハイデマリー様って抱っこ出来るの?
 私がぐるぐると考えている間にも、アーベルはパタパタと手を伸ばす。とうとう耐えきれなくなったのか、ハイデマリー様がアーベルの手を顎で示す。

「これはどういう事なのかしら?」
「えーっと、ですね……」

 言い淀んだが、正直に答えるべきか……、と思考を放棄する。私にはお茶会の前科もあるしね……。

「……抱っこ、してもらいたいんだと思います。ハイデマリー様に」
「抱っこ?わたくしが?」

 眉を上げたハイデマリー様に、慌てて首を横に振る。
 この世界の王族って自分で子育てとかしないし、他の側室の孫にあたる子供を好意的に迎えてくれる訳ないよね……?!

「で、ですよね……!!ハイデマリー様がわざわざ」
「それくらいの事なら構わないわ」
「……え?」

 いいの?
 本当に良いのかな……、と思っていたけれど、ハイデマリー様が両手を私へと伸ばす。

「ほら、寄越しなさい」
「ちょ……」

 何故そんなに悪女っぽい言い方になるのだろうか。
 アーベルも行きたがっている事だし、とおそるおそるハイデマリー様にアーベルを渡した。
 意外と赤ちゃんって見た目の割にズッシリ中身詰まってるみたいに重いから、びっくりして落とさないかヒヤヒヤする。落とされてもいつでもキャッチ出来るように、手が勝手に前に出てしまっていた。
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