この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 思わず口から疑問が出たが、思ったよりも俊敏だったのかあっという間に距離を詰められる。そして男の人は白い歯を見せて軽く手を挙げた。


「アリサ!久しぶりじゃな!懐妊したと聞いておるぞ!めでたいことだ!子供は何人いてもいい!」

「あっ、はい」


 勢いに押されて首を縦に振ると、男の人は立派な顎髭を撫でながら遠い目をして呟く。


「しかしローデリヒのやつめ……、百発百中とか我が息子ながら男として尊敬するな……。ワシ、沢山側室おったというのに……」

「そんな事もありますよ。気を落とさないでください陛下」

「おお、イーナではないか。昔も愛らしかったが、更に美しくなったのう……。どうじゃ?またワシの側室にならんか?」


 本当にさり気なく、とてもナチュラルにイーナさんの腰に手を回した中年男性。若干犯罪臭がする。

 イーナさんはニッコリ微笑んで、バッサリと切り捨てた。


「申し訳ありません。私、下賜先の子爵様に大事にされているんです。一年ほど前に女の子も産まれたんですよ」

「そ、そうか……。それは……めでたいのう……」
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