この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 イーナさんの言葉に明らかに気落ちした男の人。だけど、未だにイーナさんの腰にガッツリ手を回したまま。


「父上!!アーベルの乳母に手を出そうとしないでください!!」


 中年男性が現れた方からローデリヒさんが慣れた手つきでアーベルくんを抱いてやって来る。中年男性ーー多分きっとおそらく、この王国のトップの人は焦ったような表情で私に向き直った。


「身体に気をつけるのじゃぞ!第二子楽しみにしておるぞ!」


 脱兎のごとく走り去っていく中年男性を、呆気にとられながら私は見送った。
 なんというか……、ローデリヒさんと全くタイプが違いすぎる。ローデリヒさん廊下を走るなんてしなさそうだし。


「……イーナ、父上がすまない」

「いえいえ。お元気そうでよかったです」


 アーベルくんはローデリヒさんの腕に収まっていたけれど、私の姿を見るなり「あーたま!」と手を伸ばしてきた。可愛い。

 ローデリヒさんからアーベルくんを受け取る。アーベルくんは今日も機嫌よくニッコニコ笑っていた。
 あんまり泣いたりしないんだよね、この子。
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