ど天然彼氏の可愛がり方。-六花の恋・外伝-【完】
……誤魔化すのは簡単だ。でも、この子が真剣に考えてくれたのも伝わってくる。

僕も誠実に返すべきだと思った。

「いるよ」

その返事に、その子は瞼をおろした。

そして一度、深く呼吸した。

「そっか。その人と、お幸せに、って言ったら変だけど……叶うといいねっ」

そのまま、その子は駆け足で離れて行った。

……すれ違ったとき、涙が飛んでいるように見えた。

それでも僕は、その子を引き止めたり慰めるたりなんて出来ない。

僕は、美結以外に優しくしようなんて思えない、最低野郎だから。

「………」

伝えないでいる方が苦しい、か……。

フラれるってわかっていて告白出来る、なんて……僕は……。

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