ど天然彼氏の可愛がり方。-六花の恋・外伝-【完】
「あの、碓氷くんのこと、好き、です……っ」

そう言うのは、名前も知らない女子。

ネクタイカラーで同学年だとはわかるけど……。

「ごめん、俺、付き合うとかそういうのする気ない」

断ると、その子は、「そうだよね……」と小さく言った。

「急に呼び出してごめんなさい。断られるのはわかってたんだけど、伝えないでいる方が苦しかったから……ちゃんと振ってくれて、ありがとう」

そう言って、深く頭を下げて来た。

……こういう反応をされると、申し訳なくなってくる……。

僕の返事は、誠実を貫いたゆえの返事ではないから。

真っ直ぐに答えるなら、僕は、好きな人がいるから貴女と付き合うことは出来ない、と言うべきなんだとはわかっている。

けれど、中学の頃のトラウマ――僕にとって唯一大事な美結が傷つけられる可能性を考えてしまうと、進んでそう口にすることはためらわれた。

「あの、一つだけ教えてもらえないかな?」

「なに?」

「碓氷くんって……好きな人、いるの?」

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