たとえ叶わない恋でも。
「失礼しまーす…」
緊張で震える手を背中の後ろに隠して、平然を装う。
「あ、瑞稀ちゃん。今日は遅かったね。」
その声に、ドクンッと心臓が大きく脈打った。
「あ……ごめん、なさい。忘れてて…」
だんだん声がしぼんでいく。
顔が直視できなくて下を向いてしまった。
だからだろうか。速水センパイは少し困ったような目をして図書室の椅子から立ち上がって私の元へやってきた。
「大丈夫ですよ。怒ってないから」
下を向く私の頭をぽんぽんと優しく撫でる。
「さ、仕事しましょう」
私の頭を撫でてからさっきまで座っていた椅子に座りなおす。