秘密の同居生活~オレ様副社長の罠にはめられました~
「春臣。」

大分表情が明るくなった母親が長野のホスピタルから一時的に戻ってきている。

医者からはそろそろ東京で過ごす日も徐々に増やしていっていいといわれているらしい。

父親も1か月に2回ほどはホスピタルに顔を出すようになったらしく、東京に戻ったら母親と旅行に出かけたいと言っている。

「今、夏菜ちゃんに会ってきたわ。綺麗よ。卒倒しないようにね。」

今ではすっかり夏菜にほれ込んでしまった母親だが、その経緯は褒められたものじゃないが、いろいろある。

母親にとっては、かおりが息子ではない他の男、それが自分もかわいがっていた京太郎を好きだったという事実を知ったことで、俺とかおりの一件には興味をなくしてしまったというのもあるし…

夏菜の祖父母が桜宮家という明治までさかのぼるほどの首都圏を網羅するほどの大地主だったことがわかり、家柄もぴったりだからということで認めたということもある。

この事実は母親だけじゃなく、九条の親戚や九条家の旧知の知り合いの間でもすんなりと夏菜を受け入れてくれるのに役立ったことはいうまでもない。

結局、古い人たちは家柄をとやかく言う体質は今でも変わってはいないということだ。

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