先生の全部、俺で埋めてあげる。



「可愛らしい先生ですね」


今井さんは、先生が去った後も病室のドアを眺めていた俺に向かって笑いかける。


「そうですね」


とてもそう思います。




「荷物ここに入れておきますね」


今井さんは俺の荷物を袋から出して、整理し始めた。


「すみません、出勤日じゃないのにこんなお願いしちゃって」


「なに言ってるんですか。これぐらいさせて下さい。

お母様とお父様も、夕惺さんのこと心配してますよ」


いいよ、そんな事言わなくても
分かってるから。


「俺のことなんて、なんとも思ってないよ」


「いつも私のところに連絡がくるんです」


「俺には来ないよ」




「もうちょっと、夕惺さんから歩み寄ってもいいんじゃないですか?」


なんだよ。


なんなんだよ。


どいつもこいつも、俺の前からいなくなるクセに。


みんな自分勝手だよ…。



< 162 / 338 >

この作品をシェア

pagetop