先生の全部、俺で埋めてあげる。



「こんな時間までわざわざありがとうございます」


今井さんは先生に挨拶をしている。


「あれ、あ、すみません…。えっと…」


先生は寝ぼけながら辺りをきょろきょろと見渡している。


やっぱり寝てたんだ。


さっき手を握り返してきたのは、条件反射的に動いただけなのかな。




「では、あとはお願いします」


今井さんと交代して、先生は病室を出て行った。




1人で大丈夫かな。


病室を出ていく先生の後ろ姿を見ると心配になってくる。


夜道は危ないから送って行きたいのに。


送って行けない現状が悔しかった。



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