先生の全部、俺で埋めてあげる。
必死に追いかけたのに、どこを探してもその人は見つからなくて。
俺の見間違いだったのかな。
幻覚まで見るなんて俺、相当やべーじゃん。
俺は廊下の壁にもたれかかるようにしてしゃがみ込んだ。
もう最悪。
全部全部。
先生のせいだから…。
こうしてても仕方ない。
海香が俺を追ってくるかもしれない。
そうなるともっと面倒だ。
そう思って顔を上げると、反対側の校舎に先生の走っていく姿が見えた。
「せんせ…」
目に入った瞬間から、俺はまた先生を追うのに必死だった。
先生を追ったところで、なんの意味があるのか。
言い訳でもするつもりかよ。
そんなことしたって、どうにかなるわけでもない。
先生にとっては俺がどこで何をしてたって、どうでもいいことだって分かってる。
分かってるのに、体が言う事を聞かない。
そんなことを考えていると、また先生を見失ってしまった。