先生の全部、俺で埋めてあげる。
すると突然、図書室の扉が開く音が聞こえた。
それと同時に俺の手から先生の手が離れていった。
「あれ加ヶ梨先生、こんなところにいた。職員会議始まっちゃいますよ」
「ごめんなさい、今行きます」
そう言って本やプリントを抱えて図書室を出て行く先生。
どうしたら、先生の手をずっと握っていられるんだろう。
どうやったら、先生の気持ちを俺につなぎとめておけるんだろう。
考えたって何も分からないけど。
先生の後ろ姿を見ながら、漠然とそう思った。