先生の全部、俺で埋めてあげる。



教授が研究室から出ていって、シーンとする室内。


席を立って、その卒業アルバムの前で立ち止まる。


いつも手に取ろうとして、躊躇する。




見たいけど手に取ることができない。


今先生の顔を見てしまったら、今まで押さえつけていた感情が全部出てしまいそうで。


そうなったところで先生には会えないから。


どうしようもないのは分かってるから。


だからずっと、アルバムが気になりつつも開けないでいた。




あれから図書館の青山さんからの連絡もなかった。


がっかりする反面、少しほっとしている自分もいて。


卒業アルバムの先生を見ることすらできない今の俺が、先生と会えたとしても何ができるんだろうか。


先生は俺のことなんて覚えてすらいないかもしれない。


そんな先生に何が言えるんだろうかって。


もうずっと、同じ思考がぐるぐるとまわっている。



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