先生の全部、俺で埋めてあげる。
「だよな」
会ってどうするんだろう。
また先生のこと傷つけてしまうかもしれないって分かってるのに。
「でもちゃんと俺の今の気持ちを伝えたいって思ってるよ」
「あっそ。失恋したら、慰めてやるよ」
柾木はそう言って電話を切った。
人懐っこいんだか、素っ気ないんだか、未だに柾木のノリはつかめない。
でも柾木に自分の気持ちを言った後は、止まっていた血液が身体中をめぐるように、指先まで温かくなっていた。
今までの俺だったら、自分の気持ちを誰かに言ったり、相談したりなんて絶対なかったのに。
少しずつだけど俺は変わったのかもしれない。
こうやって、俺のことを気にかけてくれる人がいる。
それは昔の俺からすると全然予想もできなかったことで。
すごく満たさてるんだなって思った。