先生の全部、俺で埋めてあげる。



「え、里巳くんもそんな表情するんだ」




え?




「初めて笑った顔見たから」


そう言って俺の顔をじっと見る先生。




「俺だって笑いますよ」





たしかにここ数年、本気で笑うってことがなかった気がする。


最後に笑ったの、いつだったかな。




「里巳くん笑ってた方がかっこいいよ」




いきなり何を言い出すのかと思えば、眩しい笑顔でそんなこと言ったりして。


先生は何も分かっていない。




「先生は笑わない方がいいです」


「え、そんなに笑った顔ブスかな?」


って本気で心配していて。


それが可笑しくて、また笑った。




先生とちょっと話しただけなのに
さっきまでのイライラがウソみたいに溶けていくようだった。



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