先生の全部、俺で埋めてあげる。
「里巳くん、立てる?」
「はい」
先生に促されるまま立ち上がって先生についていくと一台の車があった。
「乗って」
と言って先生は後ろの座席に自分と俺の荷物を置いた。
「え?大丈夫ですよ、自分で帰れます」
「なに言ってんの。こんな時ぐらい頼っていいのよ」
先生は俺の背中に回って助手席へ促した。
なんだよ、さっきから病人扱いして…。
でもどうせなに言ったって、俺の意見なんて聞いてくれないと悟った俺は、先生の好意に素直に甘えることにした。
小さい頃から体調を崩すことはよくあったけど。
こうやってずっと、誰がそばにいてくれたことなんてなかった。
”こんな時ぐらい頼っていい”って言ってくれた先生の言葉が頭の中でぐるぐると回った。