先生の全部、俺で埋めてあげる。



みんなで屋台をまわった。


かき氷を食べたり射的をしたり。


俺のノリが悪いことは通常運転だから、誰にも何も悟られなかった。




なのに。




「夕惺くんだっけ、大丈夫?」


みんなが金魚すくいに夢中になっているのを、ただ茫然と後ろから眺めていると、
先生と雰囲気が似てる子が話しかけてきた。



「えっと」


「私、海香」


「海香ちゃん、大丈夫ってなにが?」


「悲しそうな顔してた」




今日会ったばっかりなのに、なんでそんなことが分かるんだろう。


「私でよかったら話聞くよ?」




謎に優しい海香と名乗るその女は
俺の弱った心にずかずかと入り込んでくるようだった。



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