先生の全部、俺で埋めてあげる。



「別になんにもないよ」


そう言って金魚すくいに混ざろうと、柾木に近づいた。


「ちょっと待って」


海香は俺の洋服の袖を掴んで、俺の動きを止める。




「もうすぐ花火始まるよね。私よく見える場所知ってるの」


そう言って俺の目をじっと見つめた。


「そうなんだ?」




「だから…、一緒に行かない?」





昨日までの俺だったら確実に断ってた。


先生以外の女子と一緒に花火を見るメリットなんてどこにもない。


だけど俺は




「いいよ」


そう言ってみんなと離れて海香についていった。




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