桝田くんは痛みを知らない
 ――――!?


「おそ……う?」

「これでもオトコとしての機能は働いてる、っていえば。鈍感なコトリでも少しは理解できるか?」


 …………?


「ま、わかんねーか。オマエの読んでる漫画。キス止まりだもんな」


 …………!?


「つまり。教室に戻らなきゃ。キスの先、するってこと?」

「……言わせんなよ」


 待って。

 そこは、想像できない世界だよ。


「なんで……」

「嫌なら。はやく行けよ」

「どうしてそうなるの? わたしは。桝田くんの話、ちゃんと聞きたくて。桝田くんのこと、もっと知りたくて、ここにいるのに。なんで襲うとか、言うの?」


 このままここで別れたら、桝田くんが、もっと遠くなる気がする。


 今度こそ、もう二度と近づけなくなっちゃうと思う。


 …………そんなのは、いやだ。


「ほんとわかってねえな? 俺オマエが好きなんだぞ?」


 桝田くんの顔が近づいてきたと思ったら――


「……限界。だっつーの」


 すとん、と。

 頭を、肩に、乗せられる。
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