桝田くんは痛みを知らない
 桝田くんとプリクラを撮ったあと、


「桝田くんも三段重ねにしよ?」

「するか」


 アイスを頬張るわたしの横で、無糖のアイスティーを飲む桝田くん。


「よくそんな食おうと思えるな」

「もしかして、桝田くん」

「なんだよ」

「カキ氷食べて、頭キーンとか。ならない?」

「なんねーな」

「そっか」

「おいしいよ〜、すごく。ゆっくり食べたら頭痛くならないよ」


 アイスを頬張るたびに幸せな気持ちが広がる。


 口の中で甘くとろけていくそれは、うちの冷凍庫から取りだしたアイスの何倍も贅沢な品だ。


 払うって言ったのに、

「貧乏人は財布出すな」って奢ってくれた。


 イジワルなことを言うのは、桝田くんなりの優しさなのだろう。

 
「写真とか。撮んなくていーの?」

「へ?」

「女子って。食うことよりSNS映えするかどうかに命かけてるみたいなとこあるだろ」
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