芦名くんの隠しごと



ゴクリと唾を呑み込む。


愉しそうに、だけれど決して隙のない、目の前の男の声。


「貴女を傷付けたら、芦名康生は絶望するでょうか」


そう言いながら頬に触れてくる手を払い除けたいのに、縛られているためそれができない。


「その白い柔肌に傷を付けたら、血の(あか)がとても映えそうですね」


今まででいちばんの、悪意のない───悪意。


まったく逆のものが、同時に存在するその男は、恐ろしいことに、美しい顔だった。


「………話では大人しい女性だと聞いていたのですが。その反抗的な眼差しも、悪くないです。やっぱり、ぜんぶ片付いたら、私が可愛がってあげましょう」


「………っ、冗談言わないでください。芦名くんを───」


「………口、塞がれたいですか?芦名芦名と(うるさ)いです」


< 145 / 279 >

この作品をシェア

pagetop