芦名くんの隠しごと
喉元に、ナイフ。
少しでも動いたら、死ぬような距離。
私は舐めていたのかもしれない。
目の前の相手は、想像以上に危険な
『 バ ケ モ ノ 』。
いつだか楓さんが言っていた。
この世には、どうしようもなく狂った人間がいる、って。
「………悟、やめとけよ。言ってただろ、水上野乃には何もしねえって」
「………どうしたんですか、伊織。そんな怖い顔して。安心してくださいよ。私の狙いは芦名だけなのですから」
「だとしても、だ。コイツは一応無関係なんだよ。無駄にビビらすなよ」
サトルと呼ばれたその男は、やれやれ、と言うように、わざとらしくため息をついた。
「……伊織の頼みなら仕方ないですね」