芦名くんの隠しごと



もしかしたら、私のことなんて忘れてるのかもしれない。


最近ずっと、芦名くんとまともに話せていない。


教室ではもちろん話せないし、放課後だって、私の方が先に帰ってしまう。


………やっぱりもう、私のことなんてどうでもいいのかな。


そう思って落ち込みかけたときだった。


バン!と大きな音がした。


きっと、扉が開く音。


「……ヒーローのお出ましか」


花瀬くんがポツリと呟いた。


彼の視線の先には───柔らかそうな茶髪。楓さんだ。


「───芦名は来ていないのですか」


サトルさんの落胆したような冷たい声が、建物の中に響いた。


「……月森(つきもり)、野乃ちゃんは無事なのか」


「……おお怖い。なるほど、水上さんは若槻の弱点でもあるのですね」


……え、そうなの?


私が楓さんの弱点なんて、あるわけないと思うんだけどなあ。


と、助けが来た安心感からか、どうにも緊張感のないことを思う。


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