芦名くんの隠しごと
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「───お願いします、白楼を消さないでください」
「………どうしたんだ、康生」
「この場所を、おれはまだ、失くしたくないんです」
伊織から、月森のことを頼まれて一週間。
おれは、白楼の現総長に、頼みに行った。
「この前は賛成してたよな?なにかあったのか?」
「…………、」
たしかにそうだ。
この前、おれだけ総長や幹部の人たちと、話をした。
白楼の“これから”について。
白楼は代々、この地域は他の族から守ってきたりもしていた。
───けれど。
ここ最近は、一般人が巻き込まれることは少なくなった。
それに、白楼は元々人数が少ないこともあり、総長が、“皆が明るい場所で生きていけるように”と、今の総長の代で終わらせると言っていたのだ。
『白楼は、俺たちの代で終わりにする』
この総長の言葉を聞いたのは、俺と、今の幹部の人たちだけ。
だから、今ならまだ、取り消せると思った。