芦名くんの隠しごと
「康生、俺はお前のことを可愛がってる。けどな、お前のワガママなら聞くつもりはねえよ」
………たしかに、よく考えてみればワガママなのかもしれない。
個人の感情で、大勢の人間の“これから”を消すなんてできないし、してはいけない。それも充分わかってる。
だけど、おれは伊織に頼まれたんだ。
仲間からの頼みなんて、断れるわけないじゃないか。
「……おい康生、ンな睨むなよ。聞かねえとは言ってねえよ。それにな。お前の頼みは大体、“誰かのため”に直結してんだよ。自覚ねえのかもしんねえが、お前、そこそこ優しいからな」
「……そこそこって」
思わず笑いそうになった。褒められてるのかそうじゃないのかわからない。
「ああ、そこそこだ、そこそこ。まあとにかく、なんでそう頼んできたのか、理由を教えてくれ。そしたら、もう一回くらいは考え直してやってもいいからさ」