芦名くんの隠しごと
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「総長になることになった」
その言葉にいちばん驚いていたのは、たしか夏樹だった。
「そうなの?おめでと」
楓は当然だ、とでもいうように、顔色ひとつ変えずにそう言って、あくびした。
「………兄貴、緊張感なさすぎじゃん?」
そんな楓を見て、藍が訝しげに言う。この二人も相変わらずだ。
「なに言ってんの、藍。康生が総長になったからには、むしろ安心すべきだと思うけど?この街でコイツに勝てる奴なんていないじゃん」
「……そうだけど」
「そうそう。夏樹と楓には、副総長やってもらうから」
「は?藍は?」
二人の名前しか出なかったのが意外だったのか、さっきまで驚いていた夏樹が聞いてくる。
「私がやると思う?」
「………だよな」
潔くどうしようもないことを言う藍に、もう苦笑する気にすらならない。
こうなることを見越していたのだから、特に驚くこともなかった。それは楓も同じなのだろう。