芦名くんの隠しごと



*



「総長になることになった」


その言葉にいちばん驚いていたのは、たしか夏樹だった。


「そうなの?おめでと」


楓は当然だ、とでもいうように、顔色ひとつ変えずにそう言って、あくびした。


「………兄貴、緊張感なさすぎじゃん?」


そんな楓を見て、藍が訝しげに言う。この二人も相変わらずだ。


「なに言ってんの、藍。康生が総長になったからには、むしろ安心すべきだと思うけど?この街でコイツに勝てる奴なんていないじゃん」


「……そうだけど」


「そうそう。夏樹と楓には、副総長やってもらうから」


「は?藍は?」


二人の名前しか出なかったのが意外だったのか、さっきまで驚いていた夏樹が聞いてくる。


「私がやると思う?」


「………だよな」


潔くどうしようもないことを言う藍に、もう苦笑する気にすらならない。


こうなることを見越していたのだから、特に驚くこともなかった。それは楓も同じなのだろう。


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