芦名くんの隠しごと
*
そこからは早かった。
相変わらず、伊織がみんなの前に姿を現すことはなかったけど。
なんとか悟を白楼に引きずり込み、何事もなく、あっという間に一年少し過ぎた頃。
夏の終わり。
事件が起こった。
「……康生、」
「…………」
「康生!」
「……なに、どうしたの夏樹」
暑い日だった。もう夏が終わるなんて、思えないくらい。
「……お前ちょっと、変なんじゃねえか?」
「っ、なんで?」
「お前が人の気配に気付かねえわけがねえ。声かけられるまで……いや、声かけても気付かねえなんて、明らかにおかしいだろ」
「はは……ごめん、こんな状態で総長やってるなんて、失格だ……」
「ちげーよ。そういうことを言いたいんじゃなくて。……とりあえず、熱計れ」