芦名くんの隠しごと
たしかに最近、頭がボーッとしている気がしていた。
暑さのせいだと思っていたけれど、まさか夏風邪なのだろうか。
「……夏樹、体温計なんてここには……」
あるわけないじゃん、
そう言おうとしたところで、夏樹の腕が伸びてきた。
「………あっつ、」
「そう?」
「やべーよ、お前。ひでー熱。待ってろ、楓の親父さんに電話すっから」
「いや、いい……」
「は?いいわけねーだろ。病人の意見は聞かねえよ」
強引な夏樹は、おれの意見は無視して、さっさと電話をかけはじめてしまった。
だけど、おれは夏樹いわく“自分のことに疎い”らしいから、夏樹の強引さがあってよかったのかもしれない。
「夏樹、ありが………」
先の言葉は言えなかった。
フッと意識が途切れた。
目を閉じる間際、夏樹の泣きそうな顔が見えた気がした。