芦名くんの隠しごと



*



「野乃、乗って」


「う、うん……お邪魔します」


「ははっ、どーぞ」


変に緊張しまい口調がカタコトになってしまった私を、芦名くんがおかしそうに笑う。

それだけで、ガシッと、心臓をわし掴みにされたような感覚に陥る。……もともと好き、だけど。


「……芦名くんのバイク乗るの、なんだか久しぶり」


最後に乗ったのは……あれ、いつだっけ。最近、まともに話すらできてなかった気がするし。


「そーかもね。最近、俺も忙しかったし」


そう伝えてくれるけど、やっぱり、なんで忙しかったのかは言ってくれなかった。

きっと芦名くんにとっては大したことじゃない。だけど、わたしはまた、寂しくなった。


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