芦名くんの隠しごと



そこでやっと気付く。
たしかに、いつもより強く掴みすぎてたかもしれない。


「ごめんね……」


「なんで謝るの?もっと甘えてよ」


バイクのエンジン音で、その先に言葉は続けさせてもらえなかった。

顔に残る熱は、バイクが走り出しても冷めなかった。


───ずるいよ、

そう心の中では毒づきながらも、わたしはさらに、彼に掴まる力を強めた。


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