芦名くんの隠しごと
「やだなー夏樹。僕が康生のいる前で何かすると思う?」
ヘラヘラと言う楓さんに、夏樹くんの表情は険しくなる。
「…孝也さんしかいなかったら何かしたのか」
「さあ?わかんないや」
「な、夏樹くん…!私は大丈夫だから…!ね?」
私が慌ててそう言うと、夏樹くんは「…ならいいけどよ」と言ってから、孝也さんにコーヒーを頼んだ。
「イラついてるね、夏樹」
孝也さんが苦笑しながら、夏樹くんにコーヒーを差し出した。
「…水上は甘えーんだよ」
「たしかに、野乃ちゃんはこっちの世界では少し甘いかもね」
…甘い、か。
孝也さんの言う通り、私は“こっちの世界”のことを何もわかっていない。
それこそ、学校では穏やかな芦名くんだって楓さんだって、人を殴ったりするのが当たり前なのだろう。
「……その辺の力を持たない女より、狙われやすくなる」
「でもきっと、そういう野乃ちゃんだってわかったから、夏樹も康生も野乃ちゃんに好意的なんじゃない?」